昨日、豊島区議会第2回定例会初日で、共謀罪を創設する法案に反対する意見書を提案しました。
豊島区議会においても、数の力で負けるのは初めから承知していましたが、法案成立の前に、当たって砕けても発言しておかないとならないと思いました。

それにしても、こんなひどい国会運営の下に、共謀罪法案が通ったというのは、我が国の恥です。

以下、国へ届けることができなかった意見書と、提案理由説明です。

議員提出議案第8号、いわゆる「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案に反対する意見書について、提案者を代表し、御説明申し上げます。

政府は、「共謀罪」と同意義の「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を週内にも成立させようとしています。
 本法案には過去、3度に渡って提出されながら、何れも国民の強い反対を背景に廃案となった「共謀罪」と同意義の「テロ等準備罪」の創設が盛り込まれているなど、数々の問題が指摘されて来ました。
 政府は、当初の676の適用対象の犯罪を277に減らしたとの説明がなされましたが,組織犯罪やテロ犯罪と無縁の犯罪が依然として対象とされています。また、組織的犯罪集団を適用対象とし、一般市民を対象としないと説明していましたが、もともと正当な活動をしている市民団体でも,性質が一変したと認められるときには組織的犯罪集団に当たるとの答弁があり、その判断は捜査機関がするのです。一般市民に対して恣意的な運用が行われかねない訳です。さらには、今回の法案では準備行為を犯罪成立の条件にして歯止めをかけたとしていますが,預金の引き出しなどの日常的行為も準備行為とされるので,何ら歯止めになりません。計画は,電話,メール,SNSなどでも成立し、コミュニケーションの内容を集めることが捜査 の手段となり、その捜査は,通信傍受(盗聴)の拡大になることも予測されます。市民の人権に影響を及ぼしかねない監視社会を国民は望んでいません。
 今もなお、本法案による国民の権利自由を侵害する懸念は払拭できず、問題点は解消されるに至っていないのです。
 共同通信社が5月20日、21日の両日実施した、全国電話世論調査によると、本法案に関し、政府の説明が十分だと思わないとの回答は、77.2%に達しています。
 さらには、「既遂の処罰」を原則とする刑法体系の原則を大きく変えるものであること、現行法上の「未遂罪」よりも「共謀罪」の方が重罰となる罪が出てくるなど、法体系の整合も欠いている事態も明らかになっています。
 多数の法学者から法案の問題点・矛盾点が数々指摘され、日弁連を始めとする法曹専門家達からも反対の表明が多数上がっています。

問題を指摘する声は国内に留まりません。
国連のプライバシー権に関する特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏からも「共謀罪」法案を懸念する書簡が首相に送られ、「『計画』や『実行準備行為』の定義があいまいで、恣意的な運用の危険がある」などと指摘がなされたとのこと。
また、政府は、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)締結に、本法案が不可欠と主張していますが、国内法整備の指針となる国連の「立法ガイド」を執筆した米ノースイースタン大のニコス・パッサス教授によると、「TOC条約はイデオロギー的、宗教的、政治的な動機からくる犯罪を除外している」と語り、テロ防止は条約の目的に含まないことを強調しています。
 当の国連から、趣旨を外した立法を行おうとしているということを指摘されているのです。

 また、今国会においては、他にも審議すべき重要法案が多数提出されており、中でも刑法改正案は、性犯罪の厳罰化が盛り込まれた明治以来110年ぶりの抜本的な見直しと注目されていました。刑法改正案が閣議決定されたのは本年3月7日。組織犯罪処罰法改正案の閣議決定はその2週間後で、閣議決定の順に審議することが慣例だったにも拘らず、政府は要求も突っぱねて、組織犯罪処罰法改正案を優先して審議を強引に進めました。刑法改正案は6月8日の衆議院本会議において議決されましたが、政府与党は、一日で質疑採決する旨を前日に開かれた法務委員会理事会で突如として提案し、委員会質疑や与野党協議を通じて被害当事者団体や被害者支援団体からの要望を盛り込むことの求めがあったにも拘らず、参考人質疑さえ行うことなく採決が行われました。結果として衆議院を全会一致で可決されましたが、政府が組織犯罪処罰法改正案を優先させるあまり、性犯罪の厳罰化を盛り込んだ110年ぶりの刑法改正という重要法案の審議がないがしろにされることは、慙愧に耐えません。

 今国会においては、森友学園・加計学園の疑惑に対する必要な情報開示や十分な説明責任も果たされず、重要法案に十分な審議が尽くされないなど、恣意的で乱暴な国会運営が行われていることは、嘆かわしい事態です。
 以上のように、多くの問題を孕んだ法案を、国民の納得も得られないまま、他の重要法案の審議をないがしろにしてまでも、今国会で強引に成立させようという政府の姿勢は全く許しがたい暴挙と言わざるを得ません。
 よって、「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の成立に反対を表明し、意見書を提出しようとするものであります。

以下、意見書文を朗読し、説明にかえさせていただきます。

いわゆる「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案に反対する意見書(案)

 安倍政権は、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けたテロ対策の必要性を強調し、過去、国民の強い反対で3度廃案となった「共謀罪」創設と同趣旨の内容を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を通常国会に提出し、今国会での成立を目指している。
 安倍政権は名称を「テロ等組織犯罪準備罪」と改め、適用対象や構成要件などを変更し対象犯罪数を減らしたと説明するが、対象となる「組織的犯罪集団」の定義は曖昧で拡大解釈が可能な上、それに当たるかどうかは捜査当局の判断に委ねられる。構成要件に「準備行為」を加える点に関しても、その具体的な内容は不明確で、例えば本当の目的は生活費だったとしても銀行でお金を引き出す行為の目的を捜査当局が「テロの資金調達のため」とみなせば、準備行為の容疑として成立してしまう恐れがある。277の適用対象犯罪には文化財保護法や著作権法、廃棄物処理法、競馬法、森林法などテロとの関わりが明確でないものも数多く含まれ、乱用されれば思想の抑圧、人権侵害や市民監視の強化、運動への萎縮効果をもたらしかねない危険性は何ら変わらない。さらに「共謀罪」の摘発を名目とする監視や会話の通信傍受など、極めて広範囲にわたって捜査権限が濫用される恐れがある。
 日本は国連の主要な13本のテロ防止関連条約を締結しており、それに対応して整備した国内法や現行の刑法で十分に対応可能で、国際的な要請として「共謀罪」新設が本当に必要か大いに疑問である。「共謀罪」は謀議に加わるだけで処罰できる、すなわち個人の内心や思想そのものを処罰対象にしようとするもので、実際の行為や結果が生じなければ罪には問われない現行刑法の基本原則に反し、100人を超す刑法研究者が法案反対声明を出すなど批判は広がっている。
また、「共謀」を処罰するという法案の法的性質は何も変わらないことに加え、「既遂の処罰」を原則とする刑事法体系の原則を大きく変えるものであること、さらには現行法上の「未遂罪」よりも「共謀罪」の方が重罰となる罪が出てくるなど、法体系の整合性を損なう事態も明らかになっている。
政府は、TOC条約締結のための国内法整備の必要性を立法事実として挙げているが、TOC条約はテロ対策条約ではないうえ、国連プライバシー権に関する特別報告者から本法案に対してプライバシー権と表現の自由を制約するおそれがあるとして深刻な懸念が表明された。政府は、TOC条約締結のための法整備というものの、当の国連から趣旨を外した立法を行おうとしていることを指摘されてしまったのである。
 以上のように、本法案は、我が国の刑事法体系の基本原則を破壊し、憲法に定められる基本的人権をもおびやかすおそれが高いものである。
 よって、豊島区議会は、政府に対し、下記の事項を強く求める。

一. 国民の人権を擁護し、憲法の保障する思想、信条、表現の自由に対する広範な国民の懸念が拭えぬまま法制定を行わないこと。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
年 月 日
豊島区議会議長
衆議院議長         
参議院議長         
内閣総理大臣        
内閣官房長官        
法務大臣          
外務大臣
国家公安委員会委員長   宛